スペイン・グラナダ大学のJorge A. R. Navarro教授らのグループは、この課題にチャレンジするために、近年注目を集める多孔質材料 MOF(Metal Organic Framework = 金属有機構造体)を採用しました。同グループは、ジルコニウム系のMOFであるUiO‐66に有機リチウムを導入することで、化学兵器として用いられる物質によく含まれるP-F, P-O, C-Clといった結合を切断する触媒活性が大幅に高まることを発見しました。さらに、このMOFとシルク繊維から合成した布地状の複合材料を用いた実験では、空気透過性が保たれるとともに、化学兵器の類似化合物を短時間で無毒化できることが確認されました。
今後の化学兵器対策への貢献が期待されるこの成果を報告した論文は、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) に掲載されるとともに、同誌の注目論文VIPに選ばれました。
- 論文 López-Maya, E., Montoro, C., Rodríguez-Albelo, L. M., Aznar Cervantes, S. D., Lozano-Pérez, A. A., Cenís, J. L., Barea, E. and Navarro, J. A. R. (2015), Textile/Metal–Organic-Framework Composites as Self-Detoxifying Filters for Chemical-Warfare Agents. Angew. Chem. Int. Ed., 54: 6790–6794. doi: 10.1002/anie.201502094 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- 解説記事 Self-Detoxifying Filters (May 22, 2015, Chemistry Views)
■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
⇒ 最近VIPに選ばれた論文