ヨーロッパ各国の化学者・化学技術者を対象にした就業状況調査が2013年に行われました。その結果の概要を、調査にあたった研究者らがChemistry - A European Journal誌で報告しています。
- 記事を読む Salzer, R., Taylor, P., Majcen, N. H., De Angelis, F., Wilmet, S., Varella, E. and Kozaris, I. (2015), The Professional Status of European Chemists and Chemical Engineers. Chem. Eur. J.. doi:10.1002/chem.201501364 (無料公開)
この調査は、欧州委員会 (EC) 共同研究センター (Joint Research Centre, JRC) の委嘱により行われたもので、有効回答数は3,830でした。同種の調査は、米国ではアメリカ化学会 (ACS) が定期的に実施し、Chemical & Engineering News で結果を報告していますが、欧州を対象にした大規模調査としては今回が初めてとのことです。
回答者の就職先業種のうち最も多かったのは製造業 (32%) で、次いで研究機関 (19%) 、高等教育機関 (17%) などとなっています。これら業種別の比率は、国によって大きく異なります。例えばルーマニアでは、高等教育機関に勤める化学者・化学技術者の比率が最も高く、47%に達しています。一方製造業に就く化学者・化学技術者の比率はスペインで42%に対し、英国では14%に留まっています。(本文・Figure 19) こういった違いの背景には国ごとのさまざまな事情があり、ある国で特定の業種の比率が高いからといって、その業種で就職口が多い・就職しやすいとは必ずしもいえないようです。また化学者・化学技術者の給与水準も、国による違いが大きくなっています。3年以上の職歴があり、フルタイムかつ任期なしの職に就いている博士号 (Ph. D) 取得者に現在の年収を聞いたところ、国別の中央値 (median) はスイスの€130,000(€ = 140円換算で1,820万円、以下同じ)を筆頭に、ドイツで€80,000 (1,120万円)、英国で€59,764 (837万円)、スペインで€38,000 (532万円)、ルーマニアでは€5,000 (70万円)と大きなばらつきを示しました。(本文・Table 10)
調査ではこれらのほか、回答者の大学での専攻分野や学位、初めての職を得るのに要した期間、職種、現在の職への満足度、卒業後教育の状況など多岐にわたる項目について分析を行っています。