<記事紹介> 論文の査読コメントに反論してくる著者、指摘を無視する著者に査読者はどう対処したらいい?

Credit - Score RF/Getty Images

Credit - Score RF/Getty Images

論文の査読依頼を引き受けて、問題点を丁寧に指摘するコメントを送ったのに対して、論文著者が真っ向から反論してきた — そのような経験はありますか? 自分の指摘の正しさに確信をもつ査読者なら、著者の反論に思わずカチンとくるかもしれません。

著者からそのような反応を受けたとき、査読者はどのように対応したらいいのでしょうか? Wileyで査読プロセスに関する責任者を務めるThomas Gaston氏が、WileyのブログExchangesで査読者・著者双方に求められる心構えを解説しています。

論文の著者と査読者との間で見解が異なることは、当然起こりえます。実際に研究を手がけ論文の内容に自信がある著者が、査読者による批判や指摘に同意できなければ、反論することは決して間違ったことではありません。

Gaston氏は、論文の著者、特に経験の浅い研究者は、査読者のことを自分の論文の出版を邪魔する存在とみなしがちだと言います。しかし実際には、論文の改善に向けて導くことこそが査読者の役割です。もちろん査読者が論文のリジェクトを勧告することもありますが、その場合は論文のどこに問題があるかという合理的な説明が求められます。査読者は著者に対する指南役とまでは言わないまでも、著者が自分の論文の欠点に気付くのを手助けする役割を期待されています。

writingまた査読者が修正を指示する場合、「これに従わなければアクセプトしない」と決めつけるのではなく、論文を改善するための方法をサジェストするつもりで臨むのがよいようです。査読者の役割はアドバイスを行うことで、最終的に採否の判断を行うのはエディターの役割です。

Gaston氏の考えでは、著者と査読者の間である程度の議論が行われることは自然なことですが、お互いがすれ違いの主張を投げ合うのではなく、相手がもつ懸念に応えて対話するよう留意が必要です。著者は、査読者が論文の改善のために行った指摘に対して何らかの回答をする必要があります。指摘に納得が行かなければ必ずしも従う必要はありませんが、「これこれの理由で修正は必要ない」と回答すべきで、無視してはいけません。同様に査読者の側も、著者からのフィードバックに対して同意する・しないにかかわらず、自分の考えを示すべきだとGaston氏は考えます。

時に査読者は、リビジョン後再査読のため戻ってきた論文に自分の指摘が反映されていないことに気付くかもしれません。そのような場合、著者が自分の指摘をわざと無視したと決めつけるのは早計で、悪意のない見落としかもしれないとGaston氏は言います。その際、自分の前回の指摘が引き続き有効と思うなら、なぜそう思うかという理由とともに再度指摘するのがいいでしょう。

もっと悪質なケースとしては、著者が指摘に応えようと努力すらしていない、あるいは真剣に対応していないのが明らかな場合もありえます。著者が真摯に対応しない限りこれ以上関わりを持ちたくないと思ったら、査読者はまずエディターにその懸念を伝えるべきです。

カテゴリー: 一般 タグ: パーマリンク