合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)をアルケンと反応させてアルデヒドを合成するヒドロホルミル化反応 (hydroformylation) は、1938年にオットー・レーレンが発見し、アルデヒドの工業的製造に多用される重要な触媒反応となっています。一方、その逆反応(レトロヒドロホルミル化反応)は、アルデヒドからアルケンと合成ガスを生成する反応になりますが、先行研究に乏しく、これまで反応に成功した報告例はありませんでした。
このほど東京大学大学院工学研究科・野崎京子教授の研究室は、レーレンの発見から80年近くを経て初めて、レトロヒドロホルミル化反応の達成を報告しました。この反応にはシクロペンタジエニルとイリジウムの錯体が触媒に用いられ、収率は最高で91%でした。この反応を発展させることにより、将来的には化学原料として有用な合成ガスを砂糖・グリセリン・セルロースといったありふれた原料から製造する方法の実現につながることが期待されます。
この成果を報告した論文は、Angewandte Chemie International Edition (ACIE)に掲載され、同誌の注目論文Hot Paperに選ばれました。(右上はこの論文に基づく表紙画像)
- 論文 Kusumoto, S., Tatsuki, T. and Nozaki, K. (2015), The Retro-Hydroformylation Reaction. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201503620 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
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