食事前にシャンパンなどを飲む「食前酒(アペリティフ)」は、食欲を高めてその後の食事をおいしくする効果があると言われています。また、飲んだ後はいつも締めのラーメンが食べたくなるという人も少なくないでしょう。このように、飲酒には食欲を増進させる効果があるようですが、そのメカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。
米インディアナ大学医学校の研究グループは、この「アペリティフ効果」の解明のため、食べ物のにおいに対する脳の反応にアルコール摂取が与える影響を調べる実験を行い、その結果を肥満研究の主導的な学会The Obesity Societyの公式誌 Obesity で報告しました。
- 論文 Eiler, W. J.A., Džemidžić, M., Case, K. R., Soeurt, C. M., Armstrong, C. L.H., Mattes, R. D., O’Connor, S. J., Harezlak, J., Acton, A. J., Considine, R. V. and Kareken, D. A. (2015), The apéritif effect: Alcohol’s effects on the brain’s response to food aromas in women. Obesity, 23: 1386–1393. doi:10.1002/oby.21109 (無料公開中)
- The Obesity Societyの発表資料 Alcohol Sensitizes Brain Response to Food Aromas and Increases Food Intake in Women, Research Shows: First study of its kind ties hypothalamus, in addition to the gut, to the aperitif phenomenon (June 30, 2015)
その結果、アルコールが投与された被験者では、食べ物のにおいに対して脳の視床下部がより活発に反応することが分かりました。またfMRIスキャンを受けた後の被験者に食事を出したところ、アルコール投与後に食べる量はプラセボ投与後と比べて平均で7%多くなりました。ただしこれには個人差があり、逆にプラセボ投与後のほうが多く食べた被験者も約1/3いました。
今回の実験結果は、胃腸の働きとは別に、アルコールが脳に直接作用して食欲を増進させる効果があることを示唆するものといえます。同グループでは、肥満が深刻な問題となっている米国でワインを中心にアルコール消費量が増えていることを懸念し、この研究が飲酒と過食とを関連付けるメカニズムの理解につながることを期待しています。