<論文紹介> 概日リズム(体内時計)を司る時計タンパク質を強力に制御する小分子 / 名古屋大ITbMのグループが開発に成功 (ChemMedChem)

Credit - ihsanyildizli/iStockphoto

Credit - ihsanyildizli/iStockphoto

一般的には「体内時計」として知られる「概日リズム」は、生物に備わる約24時間周期のリズムで、人間に限らず動植物から菌類まで多くの生物に見られる現象です。この概日リズムは、睡眠のほかに体温・代謝・ホルモン分泌などさまざまな生理現象に影響します。概日リズムの存在を日常生活の中で強く意識するのは、海外旅行時の時差ぼけのように生活サイクルが乱れたときくらいかもしれませんが、それだけでなく概日リズムは糖尿病など内分泌・代謝系の病気にも影響を与えることが分かっています。

これまでの研究により、体内で概日リズムを調節するメカニズムを司る複数のタンパク質(時計タンパク質)が特定されました。中でもクリプトクロム(CRY)は特に重要な時計タンパク質で、このCRYの活性を制御できれば、概日リズムの仕組みの解明に役立つだけでなく、それに関わる疾患の治療に応用できる可能性があります。

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)の廣田 毅特任准教授、Anupriya Kumar博士研究員、Steve A. Kay教授らのグループは、先に発見したCRYを安定化させ概日リズムの周期を長くする小分子KL001を基にして、その一部を改変したさまざまな分子(誘導体)を合成し、その中のひとつKL044がKL001をはるかに上回る強力なCRY安定化作用をもつことを明らかにしました。概日リズムのさらなる解明と応用に資することが期待されるこの成果は、このほどChemMedChem誌で論文として報告されました。

cmdc.201500260_ToC
ChemMedChem

カテゴリー: 論文 タグ: パーマリンク