炭化水素類の選択的酸化は、高価値な化学原料や医薬品の合成に役立つ重要な反応ですが、この反応に金属錯体触媒を用いると、触媒の配位子自体が酸化されて活性の低下を招くのが難点でした。この課題を克服するため、北海道大学触媒化学研究センター・福岡 淳教授らのグループは、ビピリジン基を導入した多孔体メソポーラス有機シリカ(BPy-PMO)を担体として、その細孔壁にRu錯体を固定化した新しい触媒を開発しました。福岡教授らは、この触媒がアダマンタンおよびデカリンの3級C–H結合の酸化反応において高い位置選択性を示すとともに、反応後は元の触媒活性・選択性を維持したまま再利用可能なことを明らかにしました。
触媒の回収・再利用はグリーンケミストリーの観点から重要であるため、この発見に基づいて多様な新触媒の実現が期待されます。この成果はChemistry - A European Journal (Chem. Eur. J.) で報告され、同誌の注目論文VIP (Very Important Paper) に選ばれるとともに、化学ニュースサイト Chemistry Viewsで紹介されました。
- 論文 Ishito, N., Kobayashi, H., Nakajima, K., Maegawa, Y., Inagaki, S., Hara, K. and Fukuoka, A. (2015), Ruthenium-Immobilized Periodic Mesoporous Organosilica: Synthesis, Characterization, and Catalytic Application for Selective Oxidation of Alkanes. Chem. Eur. J.. doi: 10.1002/chem.201502638 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- 北大の発表資料 アルカンを選択酸化できるRuシングルサイト触媒の開発に成功 (2015年8月27日)
- Chemistry Viewsの紹介記事 Reusable Ruthenium Catalyst for Selective Oxidations (September 1, 2015, Chemistry Views)
■ Chem. Eur. J.では、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
⇒ 最近VIPに選ばれた論文