東京大学大学院理学系研究科・小林 修教授らは、原料をカラムに通過させるだけで連続的な反応によって医薬品成分ロリプラムを高収率・高選択収率で合成する手法を開発、同教授が提唱する「フロー精密合成(flow fine synthesis)」の実現例として今年4月にNature誌で報告し、大きな反響を呼びました。フロー精密合成は、大きな反応容器を用いて段階ごとに反応を行う従来の「バッチ法」に比べて、中間体の分離・精製が不要、廃棄物を削減できるといった数々の利点があり、多様な医薬品・ファインケミカルの合成に向けて今後の発展が期待されています。
その小林教授は、このほどChemistry – An Asian Journalに発表した総説(Focus Review)で、自らのフロー精密合成のコンセプトを解説するとともに、これまでに報告された成功事例を紹介しています。成功事例としては、小林教授自身によるロリプラム合成のほか、アルカロイド天然物オキソマリチジン、δ-オピオイド受容体作動薬 N,N-Diethyl-4-(3-fluorophenylpiperidin-4-ylidenemethyl)benzamide、抗マラリア薬アルテミシニン、抗精神病薬オランザピン(商品名 ジプレキサ)、消炎鎮痛剤イブプロフェンのフロー合成法を取り上げ、それぞれの合成法のポイントを解説しています。
先の小林教授らの報告でフロー精密合成に関心を持った人に、この手法への理解を深めるために最適の文献として一読をおすすめします。
- 論文 Shu Kobayashi, Flow “Fine” Synthesis: High Yielding and Selective Organic Synthesis by Flow Methods Chem. Asian J.. 10.1002/asia.201500916 (本文を読むにはアクセス権が必要です)