フラボノイドの一種であるフラボン類は、多くの果物や野菜に含まれる天然化合物です。フラボンはさまざまな生物活性を有し、特に抗酸化作用をもつことから、動脈硬化・糖尿病・がん・アルツハイマー病など酸化ストレスに関わる疾患への効果が期待されています。
フラボンの合成法としては、アラン・ロビンソン反応をはじめいくつかの方法が開発されてきましたが、反応に強酸や酸化剤の使用を必要とするなどそれぞれ難点がありました。このほど東京大学大学院工学系研究科・水野 哲孝教授の研究室は、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide = LDH) に担持させた金ナノ粒子 (Au/LDH) を触媒に用いて、反応の過程で中間生成物の分離を必要としないワンポット合成によってフラボンを効率的に生成することに成功しました。
水野教授らの合成法は、ワンポット合成であることに加えて、回収の容易な固体触媒を再利用できること、大気中の酸素分子を最終酸化剤として用いること、反応を促進するための添加剤を使用しないことなど、効率的で環境にやさしい反応としての利点を備えています。今後このアプローチの応用により、幅広いフラボン誘導体の合成が実現することが期待されます。
この成果を報告する論文は、このほど Angewandte Chemie International Edition (ACIE) に掲載されるとともに、同誌の注目論文VIPに選ばれました。
- 論文 Yatabe, T., Jin, X., Yamaguchi, K. and Mizuno, N. (2015), Gold Nanoparticles Supported on a Layered Double Hydroxide as Efficient Catalysts for the One-Pot Synthesis of Flavones. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201507134 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper) に選んでいます。
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