<論文紹介> 木材由来の原料だけを用いた天然物全合成 / 米独の共同グループが報告、石油由来原料の代替に期待 (ACIE)

Credit - Zerbor/Shutterstock

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多くの有機合成反応では石油由来の化合物が出発物質に用いられますが、持続可能な社会をめざすため、植物など再生可能な原料で代替を図る動きが高まっています。米アラバマ大学のAnthony J. Arduengo III教授と独マインツ大学のTill Opatz教授らによる共同研究グループは、木材を由来とする化合物だけを出発物質に用いた天然物全合成を実現し、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告しました。

同グループは、南米産の低木 Berberis ilicifolia から1996年に初めて単離されたアルカロイドであるイリシホリンB (ilicifoline B) の初の全合成を、木材から得られたフェルラ酸、ベラトロールとメタノールを出発物質として達成しました。また同グループは、過去に報告済みのモルフィンアルカロイド類の不斉合成法に、今回開発した手法を応用しました。その結果、マツの樹皮などに含まれるメチルフェルラートなど、木材に由来する物質だけを用いたにもかかわらず、ジヒドロコデインを15工程・総収率11.2% (ee 95%) で合成することができました。これはTrostのコデイン合成や福山のモルヒネ合成などを上回る高い効率です。

木材由来の出発物質は、石油由来のそれよりも合成反応に適した構造を予め備えていて、複雑な変換反応を要せず利用できることがしばしばあります。今回の報告は、有機合成のビルディングブロックを木材に求めるアプローチの豊かな可能性を示すもので、今後の発展が期待されます。

Angewandte Chemie International Edition

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