Wiley-VCHは、各国化学会と共同出版する各ジャーナルで2015年12月に最も多くのアクセスを集めた論文(Most Accessed Article)を発表しました。そのうち、Chemistry - A European Journal誌では、東京大学大学院薬学系研究科の井上 将行教授らによる(+)-リアノドールと(+)-リアノジンの不斉全合成に関する論文が最多アクセス論文となりました。
きわめて複雑な分子構造を有する植物アルカロイドであるリアノジンは、動物組織中のカルシウムイオンチャネルのひとつリアノジン受容体と結合して、カルシウムイオンの放出によって筋収縮を引き起こす作用をもちます。このためリアノジンは、リアノジン受容体の機能を解明するための重要なツールとして用いられ、また新薬開発のためのリード構造として重要視されています。井上教授らは、独創的な合成手法によってリアノジンの不斉全合成を世界で初めて達成し、その成果を今回の論文で報告しました。
- 井上教授らの論文 Masuda, K., Koshimizu, M., Nagatomo, M. and Inoue, M. (2016), Asymmetric Total Synthesis of (+)-Ryanodol and (+)-Ryanodine. Chem. Eur. J., 22: 230–236. doi:10.1002/chem.201503641 (2016年12月末まで無料公開)
- 東京大学のプレスリリース 有機反応化学教室の長友優典助教、井上将行教授らが、カルシウムイオンチャネル開閉制御因子リアノジン、およびその類縁天然物の網羅的全合成に成功
この論文を含む各ジャーナルの最多アクセス論文は、化学ニュースサイトChemistry Viewsで紹介されています。
- Most Accessed Articles: December 2015 (January 17, 2016, Chemistry Views)