毎年3月8日は国際女性デーとされ、男女平等をめざす催しなどが世界中で行われます。この日に合わせて、Chemistry - A European Journal誌は化学に携わる女性をテーマにした特集号 Women in Chemistry を発行しました。(March 7, 2016: Volume 22, Issue 11|2016年9月末まで無料公開中) この特集号の収録論文は、いずれも女性化学者をコレスポンディング・オーサーとしており、女性化学者の研究の質の高さを伝える内容となっています。
同号の収録内容を読む
- 目次: Special Issue: Women in Chemistry (2016年9月末まで全論文を無料公開)
* 本号は、同誌が2011年に発行した特集号 Special Issue: Women in Chemistry の趣旨を引き継いだものです。
それらの論文に加えて、本号は化学分野における女性の現状を論じる5本のEditorialを掲載しています。そのひとつで、同誌のシニア・アソシエイト・エディターを務めるClaire D’Andola博士は、STEM(理工医学)分野での女性研究者の現状に関する統計データを紹介し、学部から大学院、プロの研究者とステップアップするにつれて女性の比率が下がっていく”leaky pipeline”(水漏れパイプ)と呼ばれる現象が国を問わず見られることを示しています。この状況は一部では改善が見られ、例えば各国化学会のトップを見ると、1978年に女性で初めてアメリカ化学会(ACS)会長に就任したAnna Harrison博士を先駆として、英国・ドイツなどの化学会で初の女性会長が誕生する例が徐々に増えています。
しかしその一方で、全体としては「水漏れパイプ」の状況の改善はごく緩やかにしか進んでいません。女性科学者がキャリアを断念する大きな原因が出産・子育てにあることは明らかで、対策として育児休暇取得の男女均等化や出産・子育て後の職場復帰の支援、また社会全体が子育てを支える構造が必要とD’Andola博士は論じています。それに加えて、科学・技術に関わるおもちゃを「男の子向け」と決めつけるような社会的偏見も変えていく必要があるとしています。
D’Andola博士は最後に、国際女性デーにあたってのChemistry - A European Journal誌の誓いとして、1) 編集委員に選ばれる女性を継続的に増やす 2) 査読に関与する女性の増加をめざす 3) 女性化学者とその業績に各種メディアを通じて脚光を当てる という3点を挙げています。その他のEditorialでは、各国の化学会や大学で研究者の男女平等の推進に関わる4人の識者が、それぞれの取り組みや経験を語っています。
おすすめの関連書
European Women in Chemistry
Edited by Jan Apotheker, Livia Simon Sarkadi / Foreword by Nicole J. Moreau
ISBN: 978-3-527-32956-4
256 pages / January 2011