現在生産されるアンモニアの多くは農業用肥料の製造に向けられていますが、そのほかに約20%が化学工業原料として使われています。アンモニアを経由せず、窒素分子を含窒素有機化合物に直接変換できればより効率的なはずですが、アンモニア合成法と比べてそのような方法の研究は大きく遅れていました。
独ゲッティンゲン大学のSven Schneider教授らのグループはこのほど、ピンサー型レニウム(Re)錯体を用いて窒素分子の窒素結合を切断し、そこから生じたニトリド錯体をアルキル化することによって、温和な条件下でアセトニトリルを3ステップ・収率52%で得る合成法の開発に成功しました。アンモニアを経由することなく、窒素分子から高価値な化合物を直接合成するための手法の先駆けとして、今後の発展が期待されます。
この成果を報告した論文は、Angewandte Chemie International Edition (ACIE)に掲載され、同誌の注目論文VIPに選ばれました。
- 論文 Klopsch, I., Kinauer, M., Finger, M., Würtele, C. and Schneider, S. (2016), Conversion of Dinitrogen into Acetonitrile under Ambient Conditions. Angew. Chem. Int. Ed.. doi:10.1002/anie.201600790 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
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