京都大学の梅野 健 情報学研究科教授と岩田 卓也 同博士前期課程学生は、複数のGPS観測局から電離圏の電子数異常を捉え、マグニチュード7以上の大地震を発生の1時間から20分前に予測する新しい手法を開発しました。大地震警報システムの構築につながることが期待されるこの成果は、American Geophysical Union(AGU, アメリカ地球物理学連合)の公式誌 Journal of Geophysical Research: Space Physics で論文として報告されました。
- 論文 Iwata, T., and K. Umeno (2016), Correlation analysis for preseismic total electron content anomalies around the 2011 Tohoku-Oki earthquake, J. Geophys. Res. Space Physics, 121, doi:10.1002/2016JA023036. (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- 京都大学の発表資料 大地震発生直前の電離圏異常を検出 -マグニチュード7以上の大地震の直前予測の可能性- (2016年10月03日)
2011年3月の東北地方太平洋沖地震をはじめとする巨大地震の発生直前には、震源地近くの上空にある電離圏で電子数の異常増加が観測されています。しかし、確固たる異常検知手法となるようなデータ解析法はこれまで確立されていませんでした。また、電離圏電子数の異常は、マグニチュード(M)8以上の巨大地震では観測されてきましたが、それより規模の小さいM7クラスの地震では観測されていませんでした。
梅野教授らは、複数のGPS観測局のデータを相関解析する新手法によって、2011年東北地方太平洋沖地震でのM9.0の本震だけでなく、M7クラスの前震・余震においても、地震発生の約1時間から20分前の時点で電離圏電子数の異常を捉えることに成功しました。この手法は、国土地理院が運営するGEONETの全国約1300の観測局から得られる公開データのみを利用するため、今後第三者による検証が進むことが期待できます。