Wileyのジャーナルに載った論文を読もうとしたとき、タイトルや著者名の下にある下図のようなアイコンと数字が目に入った経験のある方は多いのではないでしょうか。
しかし、何を示す数字か分からずに見過ごしてしまった人も少なくないでしょう。今回は、この数字の意味と使い方をお教えします。
この数字は、Altmetric (オルトメトリック) Attention Scoreと呼ばれるもので、それぞれの論文に対するネット上でのさまざまな反響 (ソーシャル・アテンション) を数値に換算した指標です。具体的には、
- ネットのニュース記事での引用
- ブログやTwitter, Facebookなどでの言及
- Mendeleyで保存したユーザー数
- Wikipediaでの引用
などを、スコアの提供元であるAltmetric.comが独自の基準でポイント化しています。
このようにソーシャル・アテンションを測る指標は、一般にオルトメトリクス (altmetrics) と総称されます。オルトメトリクスは、論文の影響力の評価指標として主流になっている「被引用回数」を補う新たな指標として、近年意義が広く認められるようになりました。オルトメトリクスには複数のデータ提供元が存在しますが、Altmetric.comによるスコアはその中でも特に有力なもので、Wileyジャーナルのほか、Nature, PNAS, The Lancetなど多くのジャーナルでも採用されています。
論文に付いているこのスコアが何十・何百と大きくなればなるほど、その論文がネット上で大きな反響を呼んだことを意味します。ただ、論文の読者としては、スコアの高低だけが分かってもあまり役に立ちません。もっと有益な情報は、スコアをクリックして初めて得られます。WileyのChemistrySelect誌に最近載った、次の論文を例に見てみましょう。
- Song, Y., Peng, R., Hensley, D. K., Bonnesen, P. V., Liang, L., Wu, Z., Meyer, H. M., Chi, M., Ma, C., Sumpter, B. G. and Rondinone, A. J. (2016), High-Selectivity Electrochemical Conversion of CO2 to Ethanol using a Copper Nanoparticle/N-Doped Graphene Electrode. ChemistrySelect. doi:10.1002/slct.201601169 (オープンアクセス)
米オークリッジ国立研究所のグループによるこの論文は、ナノサイズの針状触媒を用いて二酸化炭素をエタノールに変換する反応を報告したものです。発表直後から高い注目を集め、本日(2016年11月4日)現在で1,029という異例に高いスコアを獲得しています。まずは下図の位置にあるスコアをクリックして下さい。
Summaryページが開いたら、上部に並んでいるタブから「News」をクリックして下さい。この論文を取り上げたネットニュースが一覧表示され、見出しをクリックするとその本文にリンクします。
次に、Twitterタブを選んで下さい。この論文の場合、500人以上の読者によるツイートを一つ一つ見ることができます。英語のツイートだけでなく、日本人読者による日本語のツイートも多く見つかります。
このように見ていくことで、この論文に対して報道機関や読者がどのくらい反応したのか、またどういった部分に注目してどのように評価したのかを知ることができます。そういった反応は、必ずしも自分の見方と一致しないかもしれませんが、それだけに自分が気づかなかった新しい視点をもたらしてくれるかもしれません。この論文に限らず、気になる論文が見つかったらAltmetricスコアをクリックしてみてはいかがでしょうか。