この問題を、ソフトウェア工学のジャーナル Software Testing, Verification and Reliability (STVR) の共同編集長 Jeff Offutt教授(米ジョージ・メイソン大学)が、同誌のEditorialで2回にわたって取り上げています。厳密にはジャーナルによって方針が異なる可能性があるため、投稿先ジャーナルの投稿規定を確認する必要がありますが、一般的な考え方を理解するのに役立つ記事としてご紹介します。
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- Offutt, J. (2016) Editorial: STVR policy on extending conference papers to journal submissions. Softw. Test. Verif. Reliab., 26: 274–275. doi: 10.1002/stvr.1606. (無料公開)
- Offutt, J. (2016) Editorial: How to extend a conference paper to a journal paper. Softw. Test. Verif. Reliab., 26: 496–497. doi: 10.1002/stvr.1623. (無料公開)
1番目の記事によると、会議論文をまったく同じ内容のままでジャーナルに投稿するのは不可で、新規な内容を追加し拡張する必要があります。その際に一般的に言われるのが『30%ルール』で、エディターや査読者の目から見て、元の論文に対して少なくとも30%の新規な内容が加わっているというのが、二重投稿にならないための判断基準です。
30%ルールを満たす場合でも、ジャーナルに投稿する論文では
- 元の会議論文をレファレンスに含める
- (通常はIntroductionで)会議論文の内容を論じた上で、今回の論文の新規な点を要約する
ことが要件になります。
Offutt教授によると、元の会議論文の引用を漏らしただけで即リジェクトとはなりませんが、通常はMajor Revisionと判定されます。元の論文が引用されていないと、今回の論文に十分な新規性があるかどうか査読者が判断できないためです。また会議論文の情報をレファレンスではなくカバーレターに載せるのは、査読者への伝達漏れを招きかねない上に読者に情報が伝わらないため、Offutt教授のSTVR誌では認めないとしています。
2番目の記事でOffutt教授は、新しい論文には新規な理論や着想、実験結果を追加し内容を拡張するだけでなく、読者の混乱を避けるために、新しいタイトルを付けてアブストラクトも書き直すよう推奨しています。さらに、査読者に新規な内容が乏しいとの印象を与えないようIntroductionも最初から書き直すこと、関連する先行研究の引用を増やすこと、文章を徹底的に見直してリライトすることも勧めています。
原記事ではより詳しく解説されていますので、上のリンク先からぜひお読み下さい。