不倫サイトからハッカー集団が流出させた個人情報をソースにした、異例の地理学論文

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既婚者が不倫相手を探すための出会い系サイト(不倫サイト)からハッカー集団が流出させた登録者データを利用して、サイト利用者の傾向を分析した異例の論文がAmerican Geographical Society (AGS, アメリカ地理学協会)の公式誌 Geographical Review に掲載され、反響を呼んでいます。

カナダに本社をもち世界的に活動する大手不倫サイト Ashley Madison (アシュレイ・マディソン) は、2015年にハッカー集団によって登録者データを盗まれ、3千万人以上の個人情報をネット上に流出させてしまいました。流出したデータには、同サイトの登録ユーザーの名前やメールアドレスに加えて、有料サービスの利用に使われたクレジットカードの課金履歴まで含まれていました。

今回の論文を書いた米トレド大学の研究者らは、そのデータから、クレジットカードの利用履歴がある米国居住の男性約70万人を抽出し、請求先住所を基にして地理的分布を調べました。その上で、各地域の平均所得や人種別比率、信仰の熱心さ、2012年大統領選挙での投票先などの属性との相関を分析しました。

その結果、所得の高い地域ほどサイト利用者数・平均課金額とも高く、不倫サイトの利用が一種の「ぜいたく品」となっていることが示されました。信仰に熱心な地域では利用者数・課金額とも低く、信仰心が不倫への歯止めになっていることを示唆しましたが、大統領選挙の結果に基づく政治的傾向とは有意な相関が見られませんでした。

著者らは、今回のような異例のデータソースを利用した研究が、これまで未開拓だった領域の解明につながる可能性に期待を寄せる一方、他の研究者に対して、対象となる人々のプライバシーを侵さないよう十分な配慮を呼びかけています。

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