「著者が語るWiley新刊」第7回では、1月下旬に刊行される Radiation Processing of Polymer Materials and Its Industrial Applications の共著者のお一人である 幕内恵三先生(元日本原子力研究所 高崎研究所 研究主幹、特別研究員)に、同書をご紹介いただきます。
Radiation Processing of Polymer Materials and Its Industrial Applications
Keizo Makuuchi, Song Cheng
ISBN: 978-0-470-58769-0
Hardcover / 444 pages / January 2012
価格 US$149.95
(タイトルまたは表紙画像をクリックすると、リンク先でご試読用の章、索引および目次をご覧いただけます)
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右が幕内先生、左は共著者のCheng Song氏
本書は、「ポリマーの放射線加工」を訂正加筆したものです。新たに架橋ポリエチレン管、PTC、人工関節、ラジアルタイヤ、長鎖分岐、高エネルギー加速器による硬化-複合材、細胞培養器への応用を追加しました。いずれもこれまで紹介されることが少なかった放射線加工であります。また、化学構造やモルホロジーの放射線架橋への影響や放射線架橋の促進法についても大幅に加筆しました。一方、水溶性ポリマーの放射線架橋によるハイドロゲルの合成、多糖類の放射線分解、放射線加硫の項は、9章 ”Radiation Processing of Aqueous Polymer System”にまとめました。ハイドロゲル及び多糖類については、非放射線プロセスの研究開発が進展している状況を追加しました。放射線加硫については、“An Introduction to Radiation Vulcanization of Natural Rubber Latex”(T.R.I., Bangkok, 2003) を出版しましたので縮小しました。低エネルギー加速器によるキュアリングは、すぐれた技術解説書が普及したことから割愛しました。放射線重合については、実用化の可能性は低いと判断し、最終章で中国の放射線乳化重合に触れるに止めました。
本書の特色は、工業利用を主眼としており、非放射線法との技術及び経済性を比較しているところにあります。放射線プロセスが工業的に採用される条件は、他の非放射線プロセスよりも低コストで、性能にすぐれていることが力説されています。本書のもう一つの特徴は、中国や韓国、インド、ブラジル等放射線加工新興国からの文献を多数引用したところにあります。これらの国々の研究者たちが放射線加工の新たな領域を切り拓いてくれることを信じているためであります。