フランスの地中海大学Jean-Louis Kraus教授によるエッセイです。Kraus教授はHIVやアルツハイマー病の治療薬開発に取り組んできた医薬化学者ですが、この記事ではアルツハイマー病に有効な治療薬の開発に悲観的な見通しを示しています。従来の新薬開発は、アルツハイマー病の発症に関わると考えられるアミロイド蛋白やアセチルコリンエステラーゼといった脳内物質の働きを阻害することを狙いにしてきましたが、Kraus教授によると人への効果を明確に示した治療薬はありません。Kraus教授は、治療薬開発が難しいのは記憶や認知に関わる脳内のメカニズムが分かっていないためで、今後は脳の機能の分子レベルでの解明が必要であり、量子物理学者を研究に参加させることも必要だろうと示唆しています。
このエッセイはChemMedChemの次号(3/2012)に掲載の予定で、現在はEarly Viewとしてオンラインで先行公開されています。
⇒ Kraus, J.-L. (2011), Why as a Medicinal Chemist I Am Not Optimistic about the Possibility of Finding, in a Reasonable Timeframe, Small-Molecule Drugs Capable of Curing the Evolution of Alzheimer’s Disease. ChemMedChem. doi: 10.1002/cmdc.201100431