リチウムイオン電池の生みの親として知られる吉野 彰 博士(旭化成フェロー・京都大学 大学院工学研究科 特命教授)が、このほどAngewandte Chemie International Editionに寄稿したEssayで、開発の成功までの道のりを振り返っています。
現在、携帯電話やノートPC、また電気自動車など身の回りで広く用いられているリチウムイオン電池ですが、その先駆となった金属リチウム二次電池には発火・爆発しやすいという安全面での難点があり、この課題を克服するのは容易ではありませんでした。このエッセイによると、吉野博士は1986年に世界で初めてリチウムイオン電池の安全性試験を行いましたが、その時点では「この試験に失敗すれば開発打ち切り」という瀬戸際まで追い込まれていたそうです。電池の上から鉄塊を落とすという試験の結果、金属リチウム電池は激しく爆発したのに対し、リチウムイオン電池は爆発を起こしませんでした。この試験によってリチウムイオン電池の安全性が確認されたことから開発に弾みがつき、後の商業化につながりました。吉野博士は、この安全性試験の成功を「リチウムイオン電池が誕生した瞬間」(“the moment when the lithium-ion battery was born”)と語っています。
このエッセイは、Early Viewとしてオンラインで先行公開されています。(リンク先は抄録。本文PDFを読むにはアクセス権が必要です)
⇒ Yoshino, A. (2012), The Birth of the Lithium-Ion Battery. Angewandte Chemie International Edition. doi: 10.1002/anie.201105006