クモの牙が、昆虫の殻より硬いのはなぜ?(Materials Viewsから)

クモは硬い牙を持ち、獲物に突き刺して小さな穴から消化液を注入します。しかしクモの牙も、その餌となる昆虫の殻(外骨格)も、ほとんど同じようにキチン質を主成分としています。似通った材料からできていながら昆虫の殻を貫けるクモの牙の秘密は、一体どこにあるのでしょうか。

この問題に関心を持ったのが、マックス・プランク研究所のPeter Fratzl教授らの研究チームです。教授らが1.5~3mmという微小なクモの牙を詳しく調べた結果、牙はキチン質とタンパク質の比率を異にする3つの層で作られていることが分かりました。また、特に硬度が求められる牙の先端部分にはキチン質がほとんど存在せず、代わりに亜鉛と塩素が高い濃度で見つかりました。こういった部分ごとの成分の違いが、牙全体としての高い硬度を実現しているようです。この発見は、Advanced Fuctional Materials誌で論文として報告され、現在はEarly Viewとしてオンラインで先行公開されています。

クモのごく小さい牙がこのように複雑で緻密な構造を持っていることは興味深く、この論文を紹介している材料科学ニュースサイトMaterials Viewsは、自然界にある材料を理解し模倣するうえで重要な発見だとしています。

■ Materials Viewsの解説記事
 ⇒ Biomaterials with bite: A new understanding of the spider’s fang

□ 元の論文はこちら(本文を読むにはアクセス権が必要です)
 ⇒ Politi, Y., Priewasser, M., Pippel, E., Zaslansky, P., Hartmann, J., Siegel, S., Li, C., Barth, F. G. and Fratzl, P. (2012), A Spider’s Fang: How to Design an Injection Needle Using Chitin-Based Composite Material. Adv. Funct. Mater.. doi: 10.1002/adfm.201200063

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