グラフェンは、シリコンに代わる次世代の電子材料として高く期待されています。しかし、グラフェンは性質上バンドギャップを持たないため、それを材料にした電界効果トランジスタ(FET = field effect transistor)のオン/オフ比が小さくなってしまうことが実用化に向けての大きな障害になってきました。この問題を克服するためにさまざまな試みがなされてきましたが、グラフェンを幅10nmといった細長いリボン状に切り出した「グラフェン・ナノリボン」にはバンドギャップが生じることが明らかになり、有望と見られています。次の課題は、そのように幅の狭いナノリボンを効率的に大量生産する技術を確立することで、この課題にも現在多くの研究者が取り組んでいます。
この度ChemPhysChem誌に掲載されたレビュー論文で、香港ポリテクニック大学のFeng Ding教授ら中国の研究グループは、グラフェン・ナノリボンの合成のために試みられてきた主な手法を総説しています。リソグラフィー、プラズマ・エッチング、ソノケミカル的方法、金属触媒または酸化による切断、化学蒸着(CVD)による合成、化学合成、カーボンナノチューブのunzipといったアプローチが取り上げられ、中でも著者らはカーボンナノチューブのunzipを最も有望な戦略と評価しています。
この論文はEarly Viewとしてオンラインで先行公開されています。(本文を読むにはアクセス権が必要です)
⇒ Ma, L., Wang, J. and Ding, F. (2012), Recent Progress and Challenges in Graphene Nanoribbon Synthesis. ChemPhysChem. doi: 10.1002/cphc.201200253