オリンピックイヤーの今年ですが、ヨーロッパではもう一つのスポーツイベントが、オリンピックに劣らず人々の関心を集めています。先週金曜日に始まった、サッカー欧州選手権「UEFA EURO 2012(ユーロ2012)」です。
多くの専門家や一般ファンによる優勝国予想が世間を賑わす中、統計学的手法を武器に予想に加わったのが、統計学・計算機科学の研究機関「ノルウェー・コンピューティング・センター(the Norwegian Computing Center)」の統計学者たちです。(「ノルウェーが本選に出られなかったせいで時間があり余っている」のが今回予想を試みた理由の一つだそうです。)果たして統計学による予想は、専門家やファンの予想を上回って優勝国を正しく当てられるのでしょうか、それとも大外れになってしまうのでしょうか? 英国王立統計学会とWiley-BlackwellによるウェブマガジンSignificance Magazineが彼らの予想を紹介しています。
⇒ Significance Magazine - Euro 20.12%
ノルウェーの統計学者らが用いた手法は以下の通りです。
- 各国のチーム力の評価値をノルウェーの複数のサッカー専門家が判断し、初期値として用いる。実際の大会の進行につれて試合結果を踏まえて評価値を修正し、主観的要素を減らしていく
- チームAがチームB相手の試合であげる得点は、以下の式で算出される数値をパラメータとするポアソン分布に従ってランダムに変動すると仮定
パラメータ =「同レベルのチーム同士の試合で、片方のチームが決めるゴール数の平均値」(1.1と推計)×「Aのチーム力」/「Bのチーム力」
- 1.の評価値を2.のモデルに当てはめて、A・Bチームの対戦をコンピュータで「仮想試合」としてシミュレート(両チームの得点は試合ごとに変動するので、たまには弱いほうのチームが勝つこともある)、それを1万回繰り返して、AとBの対戦の勝敗確率を得る
- この確率を残り試合に当てはめ、グループリーグおよびトーナメントの勝ち抜け確率を算出
6月10日時点での予想では、ドイツの優勝確率が26.8%で最高となっています。無難な予想に思えますが、番狂わせが起こるのもこの種の大会の常ですから、どうなるでしょうか?