昨日7月4日にCERNが発表した「ヒッグス粒子」の発見は、世界中を賑わせました。ところで、ニュース記事などで、発見は「ほぼ確実」といった言い方をしているのが気になった方はいないでしょうか。これほど重要な発見なのに、「ほぼ確実」などと奥歯に物がはさまったような言い方なのはなぜでしょうか、また「ほぼ」とは具体的にどのくらい確実なのでしょうか? 専門的な記事では詳しく解説しているものもありますが、一般読者向けの記事ではなかなかそこまで分かりません。英国王立統計学会とWiley-BlackwellによるウェブマガジンSignificance Magazineは、早速「ヒッグス粒子はきっとある!(少なくとも、多分あると思う)」と題してユニークな解説記事を載せています。
⇒ The Higgs Boson – Certainly, certainly (?) there! (at least, I am pretty certain it is)
ヒッグス粒子を直接観察することはできないため、CERNは大型加速器「LHC」を使って陽子どうしを衝突させる実験を繰り返し、そこから得られるデータを収集・分析しました。上の記事によると、1秒間に6億回の衝突を引き起こすLHCで、1秒間に得られる観測データの量は1ペタバイト(=1024テラバイト)、容量5GBのDVDに換算して20万枚分にもなります。CERNではこの実験を3年間にわたって続けてきたわけですから、そのデータ量のすごさが分かりますね。
これらの膨大なデータの中から、CERNの2つの研究チームがヒッグス粒子の存在を示す痕跡を探した結果、「5シグマ」の水準で存在が確認され、今回の発表に至りました。この「5シグマ」について、記事によっては「高い確度」の一言で説明を済ませているものもありますが、「観察された現象が(データノイズによる)偶然によって起こる確率は350万分の1しかない」ことを意味します。350万分の1と言われてもピンときませんが、上の記事では、これを「21枚のコインを投げて、全部が表を向く」確率に例えています。実際にこんなことが起これば、とても偶然とは思えず「コインに何か仕掛けがあるんじゃないか?」と疑いますよね。今回の発見では、これまでの膨大なデータからCERNが積み上げたヒッグス粒子存在の証拠は、それと同じくらい「偶然では起こりにくい」、従って証拠として強力であることを、この「5シグマ」という言葉は意味しているのだそうです。