<新刊紹介> Cleavage of Carbon-Carbon Single Bonds by Transition Metals / 遷移金属触媒による炭素-炭素単結合の切断反応を解説

Cleavage of Carbon-Carbon Single Bonds by Transition MetalsCleavage of Carbon-Carbon Single Bonds by Transition Metals
 Edited by Masahiro Murakami, Naoto Chatani
 ISBN 978-3-527-33632-6
 Hardcover / 296 pages / October 2015
 US$ 175.00

有機合成のホットな研究領域として発展を遂げている、炭素-炭素単結合の遷移金属錯体触媒による切断についての最新知識をまとめた一冊です。この種の切断反応の基礎を解説する第1章に続き、2~7章ではこれまでに報告された反応例をタイプ別に取り上げます。また最終章は天然物・生物活性化合物合成への応用を論じます。

当分野のパイオニア的存在として知られる京都大学・村上 正浩教授と大阪大学・茶谷 直人教授を共編者に迎え、各章とも当分野を専門とする日本の有力な化学者によって執筆されています。

 本書の目次 

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1 Fundamental Reactions to Cleave Carbon–Carbon σ-Bonds with Transition Metal Complexes * この章を試読する(PDF)
Masahiro Murakami and Naoki Ishida

2 Reactions of Three-Membered Ring Compounds
Takanori Matsuda

3 Reactions of Four-Membered Ring Compounds
Takanori Matsuda

4 Reactions Involving Elimination of CO2 and Ketones
Tetsuya Satoh and Masahiro Miura

5 Retro-allylation and Deallylation
Hideki Yorimitsu

6 Reactions via Cleavage of Carbon–Carbon Bonds of Ketones and Nitriles
Mamoru Tobisu

7 Miscellaneous
Masahiro Murakami and Naoki Ishida

8 Total Syntheses of Natural Products and Biologically Active Compounds by Transition-Metal-Catalyzed C–C Cleavage
Masahiro Murakami and Naoki Ishida

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<新刊紹介> Polycyclic Arenes and Heteroarenes / 多環芳香族炭化水素とヘテロアレーンの合成・性質・応用を総合的に論じる初の新刊

Polycyclic Arenes and HeteroarenesPolycyclic Arenes and Heteroarenes: Synthesis, Properties, and Applications
 Edited by Qian Miao
 ISBN 978-3-527-33847-4
 Hardcover / 360 pages / October 2015
 US$ 190.00

多環芳香族炭化水素(多環式アレーン)は複数のベンゼン環がつながった(縮合した)化合物の総称で、ベンゼン環がシート状に無限に並んだグラフェンはその究極的な形といえます。2010年ノーベル物理学賞の受賞業績にもなったグラフェンは、その特異な性質と幅広い応用可能性から高い注目を集めてきましたが、グラフェン以外のさまざまな多環芳香族炭化水素や、そこにホウ素・窒素などのヘテロ原子を導入したヘテロアレーンも、理論・応用の両面から多くの研究者の関心を呼び、研究が急速に発展するホットな分野となっています。

この度刊行された本書は、多環芳香族炭化水素とヘテロアレーンの分子設計・合成法・性質から有機エレクトロニクスなどの分野への応用までを総合的に論じる初めての本です。1~8章は多環芳香族炭化水素をタイプ別に、また9~12章はヘテロアレーンをヘテロ原子(N, B, S, P)ごとに採り上げています。

本書を編纂した香港中文大学のQian Miao准教授は当分野をリードする研究者のひとりで、各章もそれぞれの主題の世界的な専門家によって執筆されています。執筆陣に大阪大学・櫻井 英博教授、京都大学・山子 茂教授、大阪大学・戸部 義人教授、東京工業大学・山下 敬郎教授ら日本人化学者が多数含まれることは、当分野での日本の研究水準の高さを示すものといえるでしょう。ケクレがベンゼンの六員環構造を発見してから150年目にあたる記念イヤーの今年にふさわしい注目の新刊としておすすめします。

 本書の目次 

* さらに詳しい目次を見るには、右上の表紙画像または書名をクリックして下さい

Part I Polycyclic Arenes

1 Open-Shell Benzenoid Polycyclic Hydrocarbons * この章を試読する(PDF)
Soumyajit Das and Jishan Wu

2 Planar Cyclopenta-Fused Polycyclic Arenes
Gabriel E. Rudebusch and Michael M. Haley

3 Growing Buckybowl Chemistry
Shuhei Higashibayashi and Hidehiro Sakurai

4 Polycyclic Arenes Containing Seven-Membered Carbocycles
Kwan Yin Cheung and Qian Miao

5 Polycyclic Arenes Containing Eight-Membered Carbocycles
Chun-Lin Deng, Xiao-Shui Peng, and Henry N. C. Wong

6 Cycloparaphenylenes and Carbon Nanorings
Shigeru Yamago, Eiichi Kayahara, and Sigma Hashimoto

7 Advances in Chemistry of Dehydrobenzoannulenes
Shunpei Nobusue and Yoshito Tobe

8 Tetraarylethenes and Aggregation-Induced Emission
Zujin Zhao and Ben Zhong Tang

Part II Polycyclic Heteroarenes

9 N-Containing Polycyclic Heteroarenes
Arun Naibi Lakshminarayana and Chunyan Chi

10 Boron-Containing Polycyclic Aromatics
David R. Levine and John D. Tovar

11 S-Containing Polycyclic Heteroarenes: Thiophene-Fused and Thiadiazole-Fused Arenes as Organic Semiconductors
Masashi Mamada and Yoshiro Yamashita

12 P-Containing Heteroarenes: Synthesis, Properties, Applications
Monika Stolar and Thomas Baumgartner

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2015年10月のワイリー理工書ベストセラーはこちら!

日本で10月に最もよく売れたWiley(Wiley-Blackwell, Wiley-VCHを含む)の理工書トップ5をご紹介します。植物の生化学・分子生物学に関する人気教科書の最新改訂版が3カ月続けてトップを守りました。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。

Biochemistry and Molecular Biology of Plants1位 Biochemistry and Molecular Biology of Plants, 2nd Edition
 Edited by Bob B. Buchanan, Wilhelm Gruissem, Russell L. Jones
 ISBN: 978-0-470-71421-8
 Paperback / 1280 pages / August 2015

カリフォルニア大学バークレー校のBob B. Buchanan名誉教授らによる、植物の生化学・分子生物学を総合的に扱う定評ある教科書の改訂第2版です、2000年に出版された初版は大成功を収め、その充実した内容と分かりやすさで名著としての評価を確立しています。今回の第2版は、その後の研究の新展開を盛り込むため大幅に改訂され、半分以上の章が書き直されました。またシグナル伝達と病原体応答に関する章が新たに追加されました。

An Introduction to Probability and Statistics, 3rd Edition2位 An Introduction to Probability and Statistics, 3rd Edition
 Vijay K. Rohatgi, A.K. Md. Ehsanes Saleh
 ISBN: 978-1-118-79964-2
 Hardcover / 688 pages / August 2015

確率論および数理統計学の定評ある入門的教科書を約12年ぶりに改訂。3部構成をとり、それぞれ確率論の基礎、統計的推定、各論を取り上げています。今回の改訂では、回帰分析についてのセクションで新たに重回帰・ロジスティック回帰・ポアソン回帰の解説を追加したほか、漸近理論の重要性の高まりに対応するため大標本理論に関する章を大幅に再構成しています。

Small Area Estimation, 2nd Edition3位 Small Area Estimation, 2nd Edition
 J. N. K. Rao, Isabel Molina
 ISBN: 978-1-118-73578-7
 Hardcover / 480 pages / August 2015

小地域推定(SAE)の理論と手法・応用を最新の知識に基づいて総合的に解説し、当分野のパイオニア的著作として高く評価された初版を約12年ぶりに改訂。R言語によるプログラムの解説や最近の応用例に関して記述が増補されています。

An Introduction to Modern Cosmology, 3rd Edition4位 An Introduction to Modern Cosmology, 3rd Edition
 Andrew Liddle
 ISBN: 978-1-118-50214-3
 Paperback / 200 pages / March 2015

学部生向けの現代宇宙論入門として定番になっている教科書が約15年ぶりに改訂されました。人工衛星プランクによる宇宙背景放射の観測ミッションなど最新の展開についての情報を盛り込む一方、フリードマン方程式による宇宙膨張モデルからさらに上級者向けの初期宇宙論まで、物理学的知識に基づく宇宙論を読者に分かりやすいよう段階を踏んで解説しています。

Organometallic Chemistry of the Transition Metals3位 The Organometallic Chemistry of the Transition Metals, 6th Edition
 Robert H. Crabtree
 ISBN: 978-1-118-13807-6
 Hardcover / 520 pages / April 2014

イェール大学のロバート・クラブトリー (Robert H. Crabtree) 教授による、遷移金属の有機金属化学に関する代表的な教科書の5年ぶりの改訂版。詳しい内容はこちらの記事をご覧下さい。


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論文の採否は、査読者による多数決では決まらない? ジャーナルのエディターは査読者の判定をこう見ている

Credit - Syda Productions/Shutterstock

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多くのジャーナルは、投稿された論文の採否を決めるために、その主題に精通した研究者に評価を依頼する査読(ピアレビュー)を行います。その際、同じ論文の評価を複数の査読者(通常は2~3人)に依頼するのが普通ですが、査読者間でアクセプト/リビジョン/リジェクトといった採否判定が分かれることも珍しくありません。そのような場合に、最終的な採否の判断はどのように下されるのでしょうか? 米ロチェスター大学の副学長で看護学ジャーナルResearch in Nursing & Health誌の編集長を務めるMargaret H. Kearney女史は、WileyのブログExchangesへの寄稿で、エディターが査読者のコメントと判定をどのように見ているかを語っています。

論文の採否を最終的に判断するのは、ジャーナルのエディターです。Kearney女史の考えでは、査読者の判定(recommendation)は多数決の投票ではなく、エディターは必ずしも多数派の意見に従う必要はないし、それどころかどの査読者とも異なる判定を下して構わないと言います。Kearney女史は査読者のことを、それぞれの専門知識に基づいて助言を与えてくれるコンサルタントのような存在と見ています。同女史は、各査読者が投稿論文について指摘した問題点を一つずつ検討し、修正不可能なほど致命的な欠陥があるかどうかによって、リジェクトとリビジョンのどちらに判定するかを決めます。

エディターのもう一つの役割は、査読者のコメントを適切な形で論文著者に伝えられるよう介入することです。査読コメントには、時に不適切な表現も含まれ、エディターはそれを削除または修正した上で著者にフィードバックします。表現に問題のあるコメントを繰り返す特に悪質な査読者には、エディターがその旨を伝えて善処を図ります。また査読者のさまざまな修正指示が錯綜していてそのまま対応するのが難しい場合、エディターは著者にどのように優先順位をつけるべきかアドバイスします。Kearney女史は、もし論文著者がそのような状況に直面したら、エディターにアドバイスを求めるよう推奨しています。

査読者には具体的でなおかつ礼節を守ったコメントが期待されるのは当然ですが、一方で、張り切りすぎて自分の専門外の領域にまで無理に口出ししようとすることは避けた方が良さそうです。エディターは、依頼した各査読者の専門領域を把握しています。例えばある査読者が統計の専門家であれば、その人が論文の統計的側面について述べた意見をエディターは特に尊重しますが、あまり縁のない領域についての意見に対しては慎重に判断します。Kearney女史は査読者に対して、自分が論文の運命を一手に握っているかのように思いこまず、自分の専門領域を熟知したエディターから意見を求められた複数の判定者のひとりとして意識するよう求めています。

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国際的なジャーナルで論文を出版するための成功戦略 / ジャーナル編集長を講師に迎え、11月19日に無料ウェビナーを開催(英語)

webinar_publishingWileyは来る11月19日(木)、ナノ科学・ナノテクの専門誌Smallの編集長を務めるJose Oliveira博士を講師に迎え、論文著者向けウェビナー(オンラインセミナー)を開催します。Oliveira博士は、論文の執筆・投稿を行う最初の段階に焦点を当て、論文著者が努力に見合った効果を上げられるよう、編集長としての知識と経験に基づいてアドバイスします。

 開催要項 

開催日:  2015年11月19日(木)
時間:   日本時間 14:00開始 / 約1時間を予定
講師:   Dr. Jose Oliveira, Editor-in-Chief, Small
※ 当ウェビナーは英語で行われます

ウェビナーの内容:

  • 論文とカバーレターの書き方
  • 自分の論文に適した投稿先の選び方
  • リジェクトへの対処 - 次の一手は?
  • Q&A

このような方におすすめ:

  • 今後論文の投稿・出版を活発に行っていきたい方
  • 論文を執筆・投稿する上での成功のコツやアドバイスを求める研究者

 ご参加方法 

無料でご参加いただけます。次のリンク先からオンラインでお申込み下さい。
  → ウェビナー参加を申し込む

 講師の略歴 

oliveiraJosé Oliveira博士は2001年にWiley-VCH(独Weinheim)に入社し、Angewandte Chemie誌のSenior Associate Editor(編集委員)を務めた。またChemistry – An Asian Journalの創刊にあたりDeputy Editor(副編集長)として尽力した。

2008年には現職であるナノ科学・ナノテク専門誌Smallの編集長に就任した。新しく創刊されたAdvanced Healthcare Materials誌の初代編集長でもある。中国の複数の大学・研究機関で名誉/客員教授の称号も得ている。

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<論文紹介> 木材由来の原料だけを用いた天然物全合成 / 米独の共同グループが報告、石油由来原料の代替に期待 (ACIE)

Credit - Zerbor/Shutterstock

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多くの有機合成反応では石油由来の化合物が出発物質に用いられますが、持続可能な社会をめざすため、植物など再生可能な原料で代替を図る動きが高まっています。米アラバマ大学のAnthony J. Arduengo III教授と独マインツ大学のTill Opatz教授らによる共同研究グループは、木材を由来とする化合物だけを出発物質に用いた天然物全合成を実現し、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告しました。

同グループは、南米産の低木 Berberis ilicifolia から1996年に初めて単離されたアルカロイドであるイリシホリンB (ilicifoline B) の初の全合成を、木材から得られたフェルラ酸、ベラトロールとメタノールを出発物質として達成しました。また同グループは、過去に報告済みのモルフィンアルカロイド類の不斉合成法に、今回開発した手法を応用しました。その結果、マツの樹皮などに含まれるメチルフェルラートなど、木材に由来する物質だけを用いたにもかかわらず、ジヒドロコデインを15工程・総収率11.2% (ee 95%) で合成することができました。これはTrostのコデイン合成や福山のモルヒネ合成などを上回る高い効率です。

木材由来の出発物質は、石油由来のそれよりも合成反応に適した構造を予め備えていて、複雑な変換反応を要せず利用できることがしばしばあります。今回の報告は、有機合成のビルディングブロックを木材に求めるアプローチの豊かな可能性を示すもので、今後の発展が期待されます。

Angewandte Chemie International Edition

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<論文紹介> 硫黄とリモネンから合成したポリマーが水・土壌中の水銀を吸着 / 低コストの環境浄化技術として期待 (ACIE Hot Paper・オープンアクセス)

Credit - PhotoLink/Getty Images

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オーストラリア・フリンダース大学(Flinders University)のJustin M. Chalker講師らのグループは、硫黄と柑橘類の皮に含まれるリモネンから合成した多硫化物(ポリスルフィド)と呼ばれるポリマーが、水中や土壌中に含まれる有毒な水銀(II)イオンを効果的に吸着する性質をもつことを発見し、Angewandte Chemie International Edition (ACIE)で報告しました。

硫黄は石油精製の過程で年間7千万トン発生し、一方のリモネンはオレンジ加工などで廃棄される皮から年間7万トン生産されています。ともに供給過剰の状態にあって安価なため、その活用法を見いだせれば大きな意義があります。同グループによると、それらを原料とするポリマーは容易に大量生産が可能で、固形物として成形できるほかパイプの内部などのコーティングにも使うことができます。産業廃棄物を活用し、無機水銀による環境汚染を低コストで浄化できる技術として応用が期待されます。

Angewandte Chemie International Edition

■ この論文は、ACIEの注目論文Hot Paperに選ばれました。ACIEでは、急速な展開によって注目を集めている分野における研究で、編集委員が特に重要性を認めた論文をHot Paperとしています。
 ⇒ 最近Hot Paperに選ばれた論文

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ナノ材料化学の創刊誌ChemNanoMatが2015年8月に最も多く読まれた論文トップ10を発表

ChemNanoMat banner

ChemNanoMatナノ材料の化学とその応用に関する研究を対象とする専門誌として今年2015年に創刊されたChemNanoMatが、2015年8月にダウンロード回数が多かった上位10報の論文を発表しました。材料科学ニュースサイトMaterials Viewsでリストが公開され、2015年12月末まで各論文とも無料で読めます。同誌の掲載論文の傾向を知るための参考としてご利用下さい。

ChemNanoMat誌は、公益社団法人日本化学会をはじめとするアジア太平洋地域の13化学会の連合体The Asian Chemical Editorial Society (ACES)を出版の母体としています。京都大学大学院工学研究科・北川進教授(物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)拠点長)ら3人の世界的な研究者を共同編集委員長に迎えるとともに、Angewandte ChemieやAdvanced Materialsの編集チームも積極的に協力することで、このホットな研究領域でのトップジャーナルに加わることをめざしています。今後の論文投稿先としてぜひご検討下さい。(北川教授ら共同編集委員長の推薦の辞)

なお同誌は、創刊後のご試読期間として今年2015年12月末までは全論文を無料公開、続いて2016年はお申し込み(オプト・イン)をいただいた機関(大学・企業など)を対象に無料オンラインアクセスをご提供します。

  • 無料アクセスをご希望の場合は、ご所属機関の図書館にご相談の上、Wileyにお申し込み下さい。お申込みはオンラインフォームで承ります。(個人での無料アクセス申し込みはお受けできません。必ず図書館を通じて機関単位でお申込み下さい。)
  • 無料アクセスの申し込みによって有料購読の義務が生じることはありません。
  • 無料期間の終了後、新しい論文を読むには有料購読が必要となりますが、たとえ有料購読を見送った場合でも、それまで無料アクセスできていた論文には引き続きアクセスできます。
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<論文紹介> カメルーンの木の根から見つかった鎮痛剤トラマドール / 「人工」説を主張するグループが新論文を発表、論争に終止符か? (ACIE Hot Paper)

Angewandte Chemie International Edition2013年、西アフリカのカメルーンで採取された薬用植物の根皮から合成鎮痛剤トラマドールを発見したとフランスとカメルーンの共同グループがAngewandte Chemie International Edition (ACIE)で報告しました。この発見は、合成薬が後になって天然の植物中に見つかったきわめて珍しい例として反響を呼びました。しかしその約1年後、独ドルトムント工科大のMichael Spiteller教授らのグループは、仏・カメルーンのグループが発見したトラマドールは天然物ではなく、同地で流通している合成トラマドールが農民や家畜に濫用された結果、環境汚染によって木の根から見つかったにすぎないという「人工」説を同じACIEで発表、それに対する元のグループからの再反論もあり両者の論争に発展していました。

このほどSpiteller教授らは、独自に行った放射線炭素C-14測定や数回にわたる現地調査の結果を論文にまとめ、自らの「人工」説の決定的な裏付けとして改めてACIEで報告しました。同教授らは (1) 英国のキュー植物園から入手した同じ木の種子や、そこから育てた木のどの部分からもトラマドールは発見されない (2) 種子から育てた木に、仏・カメルーンのグループが提唱する生合成経路で出発物質とされたフェニルアラニンを取り込ませても、トラマドールは全く生成しない (3) カメルーンでの現地調査では、トラマドールが根皮から発見された国立公園だけでなく、広範な周辺地域の土壌や地表水、河川から高濃度のトラマドールが見つかった ことなどを環境汚染による人工説の根拠に挙げています。

  •  論文  Kusari, S., Tatsimo, S. J. N., Zühlke, S. and Spiteller, M. (2015), Synthetic Origin of Tramadol in the Environment. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201508646 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

今回の論文を含めて、この論争の経緯をブログ『たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ-』さんが一連の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご参照下さい。

Spiteller教授らの現地調査では、乾季になるとトラマドールで汚染された川沿いにホームレスの人々が住みつき、汚染水を飲用や調理用として使っている様子が見られたそうです。トラマドールには副作用があり、時には人の生命にかかわることから、Spiteller教授らは、カメルーンや他の国でのトラマドールの濫用や環境汚染の状況について早急に調査するよう警鐘を鳴らしています。

■ 今回のSpiteller教授らの論文は、ACIEの注目論文Hot Paperに選ばれました。ACIEでは、急速な展開によって注目を集めている分野における研究で、編集委員が特に重要性を認めた論文をHot Paperとしています。
 ⇒ 最近Hot Paperに選ばれた論文

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大阪大・原田 明先生のAngewandte Author Profileを公開(10報目)

harada_coverAngewandte Chemie International Editionでは、“Angewandte Author Profiles”と題して、同誌で過去10年間に発表した論文が10報・25報・50報・100報に達した著者のプロフィールとQ&A, “My 5 top papers”を紹介しています。

この度、同誌に10報目となる論文を発表された大阪大学大学院理学研究科・原田 明特任教授のAuthor Profileが公開されました。ぜひご覧下さい。

  •  Author Profile   Akira Harada. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201507766
    (本文を読むにはアクセス権が必要です。以下同じ)
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