食事の時間が短い「早食い」の人に肥満が多く見られることが、これまでの疫学研究で確認されています。その原因として、急いで食べると満腹を感じにくく、普通より量を多めに食べてしまうことが挙げられ、このことも研究で裏付けられています。しかし、食事量の違いだけでは早食いと肥満の関係を十分に説明できないことから、同じ量を食べても早食いの人が肥満になりやすくなる原因の解明が待たれています。
東京工業大学大学院社会理工学研究科の林 直亨教授らの研究グループは、被験者が300kcalのブロック状の食品をできるだけ急いで食べたときと、よく噛んでゆっくり食べたときとで、食後のエネルギー消費量の違いを比較しました。早食いに要した時間は平均103秒、咀嚼回数が137回だったのに対し、ゆっくり食べた場合はそれぞれ497秒、702回でした。
その結果、食後90分間のエネルギー消費量は、急いで食べた場合は体重1kg当り平均7calだったのに対し、ゆっくり食べた場合は180calと有意に高くなり、よく噛んでゆっくり食べるとエネルギー消費量が大幅に増えることが分かりました。体重60kgの人が1日3回、1年間この食事を摂り続けたとして試算すると、その差は約11,000kcal、脂肪に換算しておよそ1.5kgに相当します。このような違いが生じるのは、ゆっくり食べると消化・吸収活動が増加することが原因と考えられます。
今回の発見は、早食いの人が、ゆっくり食べる人と同じ量を食べても太りやすくなるメカニズムを示唆するもので、肥満防止のための方法の開発につながることが期待されます。この研究結果は、肥満研究の主導的な学会The Obesity Societyの公式誌 Obesity で報告されました。
- 東工大による発表資料 ゆっくり食べると食後のエネルギー消費量が増えることを発見
- 論文 Hamada, Y., Kashima, H. and Hayashi, N. (2014), The number of chews and meal duration affect diet-induced thermogenesis and splanchnic circulation. Obesity, 22: E62–E69. doi: 10.1002/oby.20715 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
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